2015年8月7日金曜日

積極的平和主義

今朝の朝刊に
ドリアン助川さんの投書が載っていて
いたく共感。

 ウクライナのオデッサ国際映画祭に、
 私が原作小説を書いた映画『あん』が招待された。
 クロージング・フィルムという名誉ある位置付けである。
 だが、ウクライナ東部では紛争が続いている。
 参加するかどうかで、みな迷った。

 主演女優の樹木希林さんが言った。
 『そんな状況だからこそ行ってあげたいのよ』
 周囲の反対を押し切り、私を道連れに出発することになった。
 よほど不安だったのか、
 映画の製作委員会は私たちにテロ保険までかけてくれた。

 ところが、2人でオデッサに着くと、街も人も驚くほど穏やかだった。
 アジアからの参加者は私たちだけとあって、たいへんな歓迎を受けた。
 映画『あん』もすこぶる評判が良かった。
 上映後、拍手は鳴りやまず、観客は希林さんを囲んだ。
 『口のなかまで泣いた』と告げに来た若い女性を、
 希林さんがぎゅっと抱きしめたのが印象的だった。
 言語や人種を超え、人の心が通い合った夜だった。

 来て良かった。
 積極的平和主義というものが本当にあるなら、
 こういうことではないのかと思った。
 大国の軍事になびく政治よりも、
 私は文化交流こそこの国の基本姿勢であって欲しいと願う。

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